top of page

音楽療法って何? #1音楽療法の定義と歴史

  • 執筆者の写真: Hikari Sandhu
    Hikari Sandhu
  • 2024年11月14日
  • 読了時間: 4分

ree

MusicAidのひかりです。


近年、音楽の健康への効果に着目をし、大手製薬企業や大学病院が音楽と健康に注目したプロジェクトを立ち上げる動きが活発になっています。


音楽と健康と聞いて何を連想されますか?

音楽で癒される、モーツァルトを聞いて癒される、何かスピリチュアルなこと等を連想する方は多いかと思います。


私は、アメリカニューヨーク大学大学院で音楽療法を学び、現地の在宅ホスピスや日本の病院付属緩和ケア病棟で臨床経験を積み、現役研究者として色々な研究を勉強しています。

”音楽療法って何?”シリーズでは、これまで私が医療機関、NPO、地域保健センターなどで講演で度々お伝えした音楽療法に関する概要やエビデンスについて、シリーズで解説をします。


第1回目は、音楽療法の定義と歴史をご紹介します。



音楽療法の定義


音楽療法とは、臨床的に個人が抱える健康課題に対して、臨床的訓練を受けた音楽療法士が科学的根拠に基づき介入する、臨床介入のことを指します。


日本音楽療法学会

音楽(歌唱・楽器演奏・音楽鑑賞)を個人の身体的、心理的、社会的、精神的な課題に対して評価・計画を立案し実行する、音楽を用いた臨床的介入


アメリカ音楽療法学会

音楽療法とは、科学的根拠に基づいて行われる音楽的臨床介入であり、専門的な訓練を受けた療法士によって個人の様々な課題を解決する


ご覧いただける通り、音楽療法は感覚的に実施されることではなく、体系的な形をもった専門分野であることがお分かりになると思います。

近年は、国内外の医学的研究の発展により医療・福祉分野における音楽介入への注目が集まり、音楽療法士が介在しない音楽療法の形も増えています。

日本語では総じて音楽療法と表記されますが、本場アメリカでは音楽療法士が介在しない場合は、Music-based Intervention や Music Medicineとして表され、Music Therapyとは異なる表現が使われています。


音楽療法の歴史


近代音楽療法が確立されている米国における音楽療法の歴史を解説します。


1780年代~1930年代:音楽の治療的効果への関心が医師を中心に高まる


米国音楽療法学会の記録によると、1789年に、音楽療法 Music Therapyの言葉が最初に学術雑誌Columbian Magazine "Music Physically Considered"というタイトルで記述されました。

1800年代には、音楽の療法的効果についてBenjamin Rush医師の教え子であった医師や精神科医が2つの医学論文に記述をしました。1940年代まで、医師を中心として、音楽の治療的効果に関心をもった有志が学会や勉強会を作り学びを深めました。


1940年代~1950年代:社会的需要を受けて初の音楽療法課程が設置


1940年代になると、医師、音楽家、そして精神科医が、音楽は多様な領域や疾患に対して効果を持つ可能性を示唆し始めました。当時音楽家は、無給の非常勤スタッフとして雇われ、医療従事者の指導のもとで音楽療法を実施していました。

第2次世界大戦が終わると、戦後の兵士の外傷性トラウマ治療のために退役兵士病院(VA Hospital)や州立病院で働く、訓練を受けた病院音楽家の需要が一気に高まりました。

その流れを受け、1944年にミシガン州立大学で初めての音楽療法カリキュラムが設置され、続いて1946年にカンザス大学、1947年に College of the Pacific、1948年 The Chicago Musical College 等が続きました。


1960年代~1980年代:音楽療法の学問的確立の動きが急加速


大学で音楽療法課程が設立されたことで、音楽療法を知る・学ぶ専門家が増え、その結果メンタルヘルス領域に限定されていた音楽療法臨床が、多様な領域に拡大をしていきました。

1959年になると、特別教育のスペシャリストであるClive Robbinsと作曲家のPaul Nordoffによって即興を使った音楽療法モデルが構築され、障害児領域における音楽療法アプローチが作られました。Nordoff &Robbinsの即興音楽療法モデルの確立により、発達や身体的障害をもつ子どもや、感覚障害をもつ子どもを対象とした音楽療法が増加しました。

また、

1960年代に入ると、

そして1960年代に入ると、の関心が高まったきっかけたことで、

今ではアメリカ、イギリス、ドイツ、ベルギー、日本、オーストラリア、韓国、中国、マレーシア、インド、トルコ、スウェーデン、オランダ等世界中で音楽療法を勉強した専門家によって臨床活動が行われています。


日本では、1990年頃に米国や英国で音楽療法を学んだ療法士たちが日本での音楽療法教育を開始し、学会の創立、音楽療法教育課程の設立を経て、現在は高齢者施設、ホスピス、療育センター等で音楽療法士が幅広く活躍しています。


音楽の健康への効果、音楽療法の科学的根拠についてはまた別の記事でお伝えしますね。


最後までお読みいただきありがとうございました!音楽療法が少し身近になっていたら幸いです。



MusicAid

代表 三道ひかり







コメント


© 2024 Musicaid LLC

bottom of page